最高品質の
「ゆかり」をつくるために、
自ら考えて行動する、
自律的な人材を育成。
CASE STUDY
「最高品質」という基準の中心に近づくものづくりを。
創業1889年の老舗企業、坂角総本舖。同社を代表する商品といえば、贈答品やお取り寄せ品として全国的に有名な「ゆかり」だ。エビの風味を活かした飾らない味わいが、多くの人々に支持されている。
ゆかりの製造に関して同社が以前から課題と考えてきたのが、品質の均質化と生産性の向上である。ゆかりは生のエビを原料としているため、一般的な煎餅よりも風味の経時変化が速い。しかしその一方で、贈答品としてのニーズが高まる12月に備えて11月の段階から在庫を確保するなど、鮮度や品質がもっとも高い状態での販売を実現できていない状況が続いていた。また、製造過程で排出される廃棄の量が1日に170~180kgにのぼるなど、生産工程でのムダも多かった。
そうした課題を解決するために導入されたのが、OJTソリューションズのサービスである。現場主体で課題を解決できる「自ら考え行動する」人材を育むことをめざし、2014年7月から「ゆかりOJTプロジェクト」が開始された。プロジェクトの対象となったのは、本社工場でのゆかり製造の後工程。単に「良品」という枠に入る製品を増やすのではなく、最高品質という基準の中心に近づけるためのものづくりをめざし、改善活動が進められた。
すべての部署がプロジェクトに参加し、部門間の連携も加速。
テーマの一つ、「生産性14%向上」を実現する上でボトルネックとなっていたのが、ゆかり製造の後工程で使われる混成ラインのコンベアーである。6つのラインで生産されたパッケージが1本のコンベアーに合流する際に滞留が起き、1時間1ラインあたり最大約1万2,600枚を焼成できるはずが、1万1,000枚程度にとどまっていた。取りこぼしている14%の生産性をすくい上げるために、何をすれば良いか。プロジェクトメンバーが着目したのは、センサーの調整方法だった。コンベアースピードとセンサーのタイミングのもっとも効果的な組み合わせを見つけ、滞留解消を実現。その他の改善や標準化も同時に進め、見事に生産性14%向上を達成した。これと同時に進められたのが、「上包装(缶・箱詰めパッケージの上からかけられる包装)のムダ削減」「ゆかり不良削減」「ゆかりマイスター制度の構築」というテーマである。
さまざまなチャレンジの末、包装のムダ(不良が発生した際の再包装にかかる資材や人件費)削減や、不良率の低減などに成功。続く第2フェーズでは製造現場のすべての課とスタッフ部門の品質向上課がプロジェクトに参加し、改善のテーマ数は10に増えた。さらに第3フェーズになると、製造部の全職場と営業部の一部にまで活動が拡大。第5フェーズではついにすべての課が参加し、全課長がプロジェクトに携わることになった。全社を挙げた改善活動では、製造部と営業部が協力して鮮度向上に取り組むなど、部門間の連携による相乗効果も表れている。
小さな改善の積み重ねによって品質や生産性を高め、人や組織、制度の変革にも展開していった、坂角総本舗の取り組み。最高品質は、人によってつくられるもの。その考えを実現できる自律的な人材を育成しながら、時代の変化に強い組織づくりを加速させている。
CORPORATE DATA
- 団体名/(株)坂角総本舖
- 所在地/【本社】愛知県東海市荒尾町甚造15-1
- 創業/1889年
- 資本金/8000万円
- 従業員数/540名
- 事業内容/海老を中心に海の幸を主原料とするお菓子を製造・販売