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2024.07.09

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トヨタ式改善とは?改善の目的や活動のポイントをわかりやすく解説

トヨタ式改善とは?改善の目的や活動のポイントをわかりやすく解説

山本 昭則

監修者

山本 昭則

OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポートするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車のプレスにて39年の現場経験を経て、OJTソリューションズに入社しました。改善活動には時に大変な場面もあります。それを乗り越える笑顔、会話を特に大事にしています。休日は趣味の山小屋づくりで精神統一をし、日々の仕事の英気を養っています。

トヨタ式改善とは、簡単に言えば「ムダ・ムラ・ムリ」を排除して生産性や品質を高める活動のことです。国内の製造業はもちろんのこと、昨今では海外やサービス業などでも注目されています。Amazonでも「KAIZEN」という言葉が浸透しており、実際に改善活動が実践されているようです。

今後労働人口が減少する日本では、改善による人材活用が必須となってきます。本記事では、トヨタ式改善の目的や活動のポイントをわかりやすく解説します。

トヨタ式改善とは

トヨタ式改善とは、業務における「ムダ・ムラ・ムリ」を発見し排除することで仕事の付加価値を高める活動のことです。

  • ムダ…仕事をする上で必要のない動き、モノ
  • ムラ…業務量や品質の一時的なばらつき
  • ムリ…人や機械に過度の負担がかかること

ムダとは仕事をする上で必要のない動きやモノのことです。トヨタでは「付加価値を生まず、原価のみを高める生産の要素」と定義されることもあります。ムダはさらに7つに分類され、トヨタでは「7つのムダ」の視点でムダを発見しています

  • つくり過ぎのムダ
  • 在庫のムダ
  • 運搬のムダ
  • 手待ちのムダ
  • 動作のムダ
  • 加工そのもののムダ
  • 不良・手直しのムダ

たとえばつくり過ぎのムダとは必要以上に多く早くつくってしまうこと、手待ちのムダとは作業者が次の作業に進めず一時的に何もしていない状態のことをいいます。

ムラとは業務量や品質の一時的なばらつきのことです。特定の人や部署に業務が集中していること、同一製品やサービスにおいて人や店舗によって品質に差が出ていることをいいます。

ムリとは人や機械に過度の負担がかかることです。人の例をあげると、特定の人に業務が集中している、体を痛めるような姿勢で作業している、その人では解決できないような負荷の高い業務をあたえる、などがムリにあたります。機械の例をあげると、設備の最大スピードを超えた早さでラインを動かす、メンテナンスが必要な状態にもかかわらず通常通り稼働させる、などがムリにあたります。

業務の中にひそむこのような「ムダ・ムラ・ムリ」を発見することが、トヨタ式改善の第一歩です。

トヨタ式改善の3つの目的

トヨタ式改善には大きく3つの目的があります。

  • QCDS効果(品質・原価・生産性・安全)を高める
  • 仕事をラクにし、従業員エンゲージメントを高める
  • 改善活動を通して人材を育成する

それぞれの目的を詳しく解説します。

QCDS効果を高める

大きな目的の一つはQCDSの向上です。QCDSとは、Quality(品質)、Cost(原価)、Delivery(生産性・納期)、Safe(安全)のことをさします。モノのムダを排除すれば材料費や製造原価などの原価を下げることができますし、人の動きのムダを排除すれば早く作れるようになり納期が短縮されます。ムラをなくせば品質が一定に担保されますし、ムリをなくせば働く人の安全につながります。

仕事をラクにし、従業員エンゲージメントを高める

改善と聞くと収益につながる効果が注目されがちですが、人や組織に与える影響も非常に大きいです。ムダ・ムリ・ムラを排除すれば、必然的に作業をする人はラクになります。改善活動を通してコミュニケーションが活発になり、改善の成功体験を通して会社や仲間への愛着が深まればエンゲージメント向上にもつながります。

改善活動を通して人材を育成する

トヨタでは改善活動を最高の人材育成の機会ととらえます。ムダ・ムリ・ムラを発見するプロセス、見つけた問題の解決策を考えるプロセス、解決策に人を巻込み実行するプロセス、効果を確認し標準化するプロセス、あらゆる過程が人の成長につながります。

トヨタ式改善の進め方

トヨタ式改善は、以下の進め方で実践できます。

  • 現状把握し問題を見つける
  • 改善案を考える
  • 改善案を実行する
  • 改善の成果を評価する

ここでは、それぞれの項目を紹介します。

現状把握し問題を見つける

まずは現場の現状を把握し、問題を見つけましょう。

先に述べた「ムダ・ムラ・ムリ」を現地現物で見つけることから始めます。最初はなかなか見つからないかもしれません。見つからない場合は「ムリ」に注目するのがおすすめです。やりにくいと感じる仕事、大変だと思っている仕事に注目してみましょう。また、第三者に見てもらうのも効果的です。仕事のやり方に慣れている人はそれが当たり前になってしまい、改善ポイントを見つけにくいものです。部署が違う人に作業を観察してもらう、作業の様子を録画して同僚とお互いにみる、などの工夫をしてみましょう

以下の記事では、トヨタで提唱される7つのムダを詳しく解説しています。それぞれの定義や改善の手法だけでなく覚えるコツもまとめているので、ぜひご覧ください。

7つのムダとは?トヨタ生産方式の考え方や改善の具体例も解説

改善案を考える

改善すべきポイントが見つかったら、改善案を考えます。複数人でアイデアを出し合い、出たアイデアに優先順位をつけましょう。優先順位は、効果やコスト、実現可能性などの複数の視点で決めます。現状の把握が甘いと、いい改善案は出てきません。

「設備を入れ替える」「皆に広報して徹底する」など安易な案に落ち着いてしまいがちです。現状把握でわかった事実をもとに、効果のある改善案を考えましょう。

改善案を実行する

改善案が定まったらいよいよ実行です。誰が何をいつまでにどうする、を明確にして役割を分けて実行しましょう。なお、どのぐらいの効果が出たのかを把握するためには改善前の状態の把握も重要です。

今どれくらい時間がかかっているのか?今はどんなレイアウトなのか?こういった改善前の状態も明確にしておきましょう。

改善の成果を評価する

実行の結果、どんな成果が得られたか評価します。定量的、定性的の両面で評価することが重要です。また、結果だけでなくプロセスも評価しましょう。

どんなプロセスを踏んだからうまくいったのか、逆にどのプロセスに問題があったからうまくいかなかったのか、このようなプロセスの評価と検討が次の改善の成否を分けます。

トヨタ式改善活動を失敗させないためにすべきこと

改善活動は成功ばかりではありません。活動が途中で立ち消えてしまう、だんだんとマンネリ化してやる気がなくなっていく、という場合もあります。失敗を防ぐ方法はいくつかありますが、改善活動初期において特に重要な2点をご紹介します。

  • 経営層や管理職層の関与
  • 小さな成功体験を積ませる

経営層や管理職層が関与する

経営層や管理職層がトップダウンで改善を促しても、実際に手を動かすのは現場の従業員です。なぜ改善をするのか、改善をするとどうなるか、という目的と効果を明確に伝えましょう。「コスト削減のために改善をせよ」という命令だけでは、必ず改善活動は頓挫します。役割がありますから、常に経営層や管理監督者が改善活動に張り付くわけにはいきません。

しかし活動のキーポイントになる場面では、現場におもむき活動の様子を観察し、従業員をモチベートしましょう。上司が見てくれている、という感覚が従業員の改善に対する意識を高めます。また、改善活動における環境整備は経営の仕事です。時間を確保する、場合によっては改善のための予算を確保するなどして活動をサポートしましょう。

小さな成功体験を積ませる

改善は収益面に効果を生みます。しかし最初から大きな収益効果だけを狙い改善活動を始めても、従業員はついていけません。会社の収益と、自分の日々おこなう業務のつながりを感じられるのは管理職以降になってからのことが多いでしょう。

まずはどんなに身近なテーマでもいいので「自分の仕事がラクになる」改善からはじめることをおすすめします。モノを取りに行く時間が減った、かがむ作業がなくなった、少し早く帰れるようになった。こういった小さな成功体験の積み重ねが従業員の改善意識を変え、大きな経営効果につながります

トヨタ式改善の3つの具体例

トヨタ式改善とは業務における「ムダ・ムラ・ムリ」を排除して生産性や品質を高める活動を指します。ここでは、トヨタ式改善の具体例を3つ紹介します。

  • ムダの排除:食品製造業のライン作業改善
  • ムラの排除:介護施設の入居者対応改善
  • ムリの排除:金属加工業の作業改善

それぞれの具体例を詳しく紹介します。

ムダの排除:食品製造業のライン作業改善

食品製造業で「不良・手直しのムダ」を改善した事例です。とある食品製造業では、年間で十数万枚の包装不良が発生しており、再包装にかかる資材や人件費がコストに重くのしかかっていました。包装不良を機械別、原因別に細かく分析し、改善すべきポイントを特定しました。

最も改善すべきポイントは、正しい位置に糊がついていない、糊がはみ出して汚れるなどの「糊不良」でした。設備に対して噴射の圧の安定化、洗浄のしくみ改善などを実施し、1年半後には不良率を5%代から1%代まで下げることに成功しました。

この改善で重要なのは「原因の特定」です。ただやみくもに目についたところから改善しても、どれほどの効果が出るかはわかりません。包装が問題であり、特にこの不良が多い、という改善ポイントの特定が効果につながった事例です。

ムラの排除:介護施設の入居者対応改善

介護施設で対応品質のムラを改善した事例です。この介護施設は入居者のグループ構成により、介護士の負荷にムラがある状態でした。忙しいユニットAは残業も多く、対応する業務量も多いため対応を急いでせねばならない。一方でユニットBは比較的業務量が少ないため、入居者ひとりひとりに対して丁寧な対応ができる。

このユニット間の業務負荷のムラと入居者への対応品質のムラを改善するために、負荷の視える化と作業の標準化を実施しました。負荷の視える化とは「ユニットごとの介護度の点数」の視える化です。入居者各人が必要とする介護度を分析して点数化し、その点数がユニットごとに同程度になるように担当者の構成を入れ替え、負荷のムラを改善しました。

作業の標準化とは「現時点でもっともいい作業のやり方」を標準にし、全員がそのやり方を実践することです。特に入浴に関して介護士それぞれのやり方に任されていた状況だったため、標準を優先して作成し品質のムラを改善しました。

ムリの排除:金属加工業の作業改善

金属加工業で作業を改善した事例です。仕事の性質上重量物を扱うことが多く、腰や膝の疾病が起きやすいことが課題でした。作業を観察すると、モノをもった状態でかがむ、ふりかえるなどの負担の高い作業が多い状況でした。モノの置き場の変更、高さのある作業台の作成、動線の変更などを実施して作業のムリを改善しました。

この改善において重要なのは、そのやり方が当たり前になっているとムリに気づけないということです。普段作業をしている際、入社した時に教わったやり方、過去からずっと変わっていないやり方を疑う機会はまずありません。時には第三者の目で見てもらうことで作業のムリに気づくことができます。

トヨタ式改善にデメリットはある?

トヨタ式改善には収益面の効果、人材育成の効果などさまざまなメリットがあります。一方でトヨタ式改善は「つらいもの」「時代遅れ」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。改善活動はやれば簡単に効果が出るものではありません。業務で忙しい中で改善活動の時間を捻出した場合、一時的な負荷増大が起きることもあります。

また、目的や効果を共有されずに現場に押し付ける改善活動は現場にとってはつらいものです。経営や管理職層が関与し、現場がラクになることを実感できる改善ができれば改善活動がつらいものであるというイメージは払拭できるのではないでしょうか。

また、トヨタ式改善が時代遅れかというとまったくそんなことはありません。冒頭のAmazonの例で述べたように、世界で評価され、現在でも取り組まれている活動です。今後の日本の企業を支え続けるといってもいい活動でしょう。

トヨタ式改善のポイント

トヨタ式改善といっても、粒の大きさはさまざまです。モノの置き場変更のような個人でできる小改善から、最適な導線をつくる設備レイアウト変更のような大きな改善もあります。どんな改善であれ、最初の第一歩は改善のネタの発見から始まります。

当たり前のことですが、業務に潜むムダ・ムラ・ムリに気づかなければ改善はできません。気づくためには「現地現物」が大原則です。製造業であれサービス業であれ、実際に働く現場で、現物を見ながらムダ・ムリ・ムラを探す。こういった問題発見視点をもった人材の育成からぜひ始めて見てください。

まとめ

本記事では、トヨタ式改善の定義や目的、ポイントについて解説しました。

  • 改善とはムダ・ムラ・ムリを排除し仕事の付加価値を高める活動
  • ムダとは仕事をする上で必要のない動き、モノ
  • ムラとは業務量や品質の一時的なばらつき
  • ムリとは人や機械に過度の負担がかかること
  • 改善の主な目的はQCDS効果、仕事をラクにする、人材育成の3つ
  • 改善の第一歩は問題発見視点の育成から

トヨタ自動車の強みの源泉は改善ができる人材にあります。小さな改善の積み重ねが大きな経営効果を生みます。ぜひこの記事を参考に、トヨタ式改善の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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