監修者
文室 義広
OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポートするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車にて、製造現場の改善、販売店の事務系改善などの42年の経験をへてOJTソリューションズに入社しました。少林寺拳法で鍛えた「自他共楽」の精神を胸に、お客様の会社の社員になった気持ちで日々改善活動に伴走しています。
トヨタでは仕事をする上で必要のない動きやモノを「ムダ」と定義しています。生産現場やオフィス、営業の現場でもムダな行動や時間が発生しているはずです。何度も同じ場所にモノを取りに行ったり必要以上に上司に情報確認をしたりするなどはすべてムダととらえられます。トヨタではこのようなムダを「運搬のムダ」と呼んでいます。
運搬のムダは付加価値を生まないため、業務効率や生産性が下がるだけでなく、メンバーの体力や気力を消耗してしまうかもしれません。トヨタの生産現場では、レイアウトを「一筆書き」になるように工夫したりすることでムダをなくす努力をしています。本記事ではトヨタの運搬のムダの概要やどのようにして解決すべきかを詳しく紹介します。業務効率を向上させたいと考えている方はぜひご覧ください。
運搬のムダとは、付加価値を生まない歩行やモノの運搬、情報の流れなどを指します。どのような職場でも、ムダな時間や行動が見られ、業務効率や生産性を低下させている可能性があります。
例えば、オフィスの場合は頻繁にコピー機を使う仕事であるにも関わらず、デスクとコピー機の距離が遠く何度も行き来している状態が当てはまります。また、上司の確認が必須の案件に関して、席を外している上司を探して職場内を右往左往している場合なども、運搬のムダに当てはまります。
生産現場ではムダな移動が発生しないように、計画的に作業場のレイアウトや備品の配置を工夫して対策しています。最低限の行動で作業ができるよう工夫すれば、ムダなく効率的に業務を遂行でき、生産性の向上にもつながるでしょう。
運搬のムダをなくすには1回の移動で必要なものがすべて揃うようなレイアウトにすることが効果的です。トヨタでは「一筆書き」のレイアウトを取り入れており、何度も作業場から離れて必要なモノを取りに行くことを防いでいます。
運搬のムダは生産現場だけではなくオフィスでも起こります。用事のたびに席を立ってウロウロするのは効率的ではありません。席を離れる際には複数の用事を一度に済ませて、もっとも早くすべての用事が終わる「一筆書き」のルートを選ぶのが改善のポイントです。
こうした動きは無意識のうちに繰り返していることが多いので、普段の行動を見直してみましょう。移動する時間を極力減らせば、業務効率が向上するはずです。
数ある業種のなかでも営業職は移動が多いため、運搬のムダが発生しやすいです。1日のうちに複数のお客様や取引先を訪問しますが、移動時間そのものは付加価値を生み出しません。そのため、移動時間はできるだけ短くし、効率的に複数の訪問先を回る必要があります。
仮に移動時間が30分短縮できただけでも、もう1件追加で他のお客様を訪問する時間が増えるかもしれません。営業職は訪問先が増えれば増えるほど生産性の向上につながる可能性があるため、最短ルートでの移動を心がけることが重要です。営業職でも生産現場やオフィスのように「一筆書き」を意識して段取りをすることで、移動にかかる時間を大幅に短縮できます。
「情報の停滞」も運搬のムダの一つです。例えば、上司の承諾を得なければ次の作業に進めない案件があったとしましょう。この時上司が席を外していればその時間は仕事の手も止まってしまうため、「手待ちのムダ」につながります。このような場合、そもそも本当に上司の確認が必要なのかを考えるべきです。また、リスクヘッジとして上司の予定の把握や代理決裁できる人物の選定をおこなっておくと安心です。
「運搬のムダ」はトヨタの生産現場でムダを見つける視点として使われる「7つのムダ」のひとつです。以下の記事では7つのムダを詳しく解説しています。改善の具体例もまとめているので、ぜひご覧ください。
トヨタでは付加価値を生まない歩行やモノの運搬、情報の流れなどをまとめて運搬のムダと呼んでいます。運搬のムダを解消するためには以下の3つの方法が有効です。
「なんだか行ったり来たりしていて落ち着かない」と違和感を覚えるところには、運搬のムダが眠っているはずです。業務効率が悪いと感じている方は、ぜひ今回紹介した運搬のムダを解消する方法を実践してみてください。
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