監修者
丸山 浩幸
OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポートするエグゼクティブトレーナーをしています。大阪府出身、トヨタ自動車の品質管理にて41年の現場経験を経て、OJTソリューションズに入社しました。お客様の現場では「この改善、よかったで!」ともう一声の思いやりを大事に、仲間意識が高まるような改善活動ができるよう日々伴走しています。
仕事で起きる問題は、多種多様です。「提出書類の締め切りに遅れる」「机の上が片づいていない」といった比較的小さな問題から、「目標達成ができない」「高い確率で不良品が発生する」「従業員がすぐに辞めてしまう」といった大きな問題までさまざまです。
比較的小さくて、よく起きる問題であれば、これまでの経験や勘に頼って対策を立てて根絶することも可能です。ありがちな問題は、原因や対策方法をすでにつかんでいるケースが多いためです。
しかし、「大きな問題」は、勘や経験で簡単に解決するとはかぎりません。根本から解決するためには時間もかかりますし、何が本当の問題であるかが見えていないケースがほとんどです。
本記事では、トヨタで「大きな問題」を解決するときに使用される問題解決のステップを紹介します。
トヨタでは問題解決を8つのステップに分けて取り組みます。
問題解決の8つのステップのなかで、客観的なデータや数字などに基づいて論理的に思考や分析をすることによって、勘や経験による思い込みを排除し、効率的に問題を解決することができます。
前半の4つのステップでは、まず「①問題の明確化」と、「②現状把握」に時間をかけて取り組むことがポイントです。「①問題の明確化」では、仕事の目的やあるべき姿を考え、現状とのギャップ(問題)を明らかにします。そして「②現状把握」で問題を層別・具体化し、取り組むターゲットを決めます。
「③目標の設定」では、②で決めた取り組む問題を解決するための目標を定めます。ここでは、自ら解決する意思を込めて挑戦的な目標にすることが大切です。
「④要因解析」とは、問題が起きている本当の原因をツールなどを使って徹底的に分析します。先入観をもたずにより多くの要因を洗い出し、真因を特定します。このステップでは「現地現物」で、しっかりと現場で実態を見ながら検討を進めていくことが大切です。
また、①問題の明確化~③目標の設定のステップでは、「定量的に」考えることが必要になります。感覚的な言葉ではなく、具体的な数値で現状や目標を整理します。
後半の4つのステップでは、チームワークと実行力が鍵になります。
まず「⑤対策立案」や、「⑥対策実行」では、対策方法の優先順位付けをして付加価値の高いものからスピーディーに取り組みます。
また、「⑦効果確認」では、実際の結果だけではなく、プロセスも評価しながら関係者と共有します。
最後の「⑧標準化・再発防止」では、問題の根絶に向けて、対策の方法や作業のやり方を標準化し、各メンバーへ内容を共有することで成果をしくみとして定着させます。
問題解決の8ステップを活用するメリットは大きく3つあります。
一つ目は、「論理的に考えることができる」ことです。
ステップに沿って検討を進めると、問題の本質をとらえるところから順序立てて適切に検討することができます。また、数値でとらえることも大切にしているため、勘や経験に頼らず論理的に組み立てることができます。
二つ目は、「成果やプロセスが共有しやすい」ことです。
問題解決8つのステップを導入すると、それが会社の共通言語となり、お互いの取り組みや考えに対してアドバイスし合えるようになります。
三つ目は、「あらゆる仕事の進め方の指針になる」ことです。
新しいことを始めるときなどに、上司や部下に納得してもらいやすくなります。というのも、問題解決8つのステップに沿って考えることで、現状の何が問題で、なぜこれが必要で、目標はいくつで、どのような施策を実行するか、と論理的に説明することができるためです。
8つのステップを踏むことは、問題解決のプロセスを「視える化」することでもあります。
8つのステップに沿って客観的に考えていくと、「なぜこれが問題なのか」「どのような分析をして問題の原因を特定したのか」「具体的にどのような対策をとればいいのか」といったプロセスを重視・共有することで、勘や経験に頼った問題解決を防ぐことができます。
トヨタの現場では、新入社員のころからQCサークル活動などを通して問題解決の8ステップに沿って思考することを学びます。従業員一人ひとりが8つのステップに基づき、日々発生する問題や、よりよくするための改善に取り組むことで成果につなげているのです。
トヨタで使用されている問題解決の8つのステップを紹介しました。
このステップでは勘や経験による思い込みを排除し、客観的なデータや数値をもとに論理的に問題を解決する手法です。トヨタでは、8ステップの手法を繰り返しの実践で身に着けさせることを重視しています。現場の「問題解決力」を高めるために、ぜひこのプロセスを参考にしてください。
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