監修者
見城 吉昭
OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車の機械加工にて39年の現場経験を積み、OJTソリューションズに入社しました。趣味の読書や旅行で自分の世界を広げながら、現場で働く人の声を大事に「働く人の心のための改善」に日々取り組んでいます。
業種や部署を問わずどのような企業でも「上司」が存在し、部下を指導しますが、上司によって性格や教育の方法はさまざまです。部下に対する接し方や指導方法によって、上司に対する信頼や安心感は大きく左右されるといっても過言ではありません。
トヨタでは、世間一般に見られる「よくある上司」と比較し、管理監督者としてのあるべき姿を目指しています。本記事ではトヨタの上司とよくある上司との間で具体的に違う点を4つ解説します。上司としてのあり方や部下への接し方にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
一般的に上司(管理監督者)は戦略の達成と強い組織づくり、この2つの役割が求められます。戦略の達成については強く意識している上司が多いでしょう。一方で強い組織づくりやそこに紐づく人材の育成には悩みを持つ方が多いかと思います。
トヨタの上司はこの組織づくりと人材育成を特に重視します。これがトヨタの上司とよくある上司の違いと言えるでしょう。人を育て組織を強くするには、日常の部下との接し方が重要です。具体的には以下のような4つの行動です。
それぞれの項目を見ると、「意外とできていない」と感じられるかもしれません。少しずつでも意識を変えて部下と接することで、自主性を持ってくれたりチームワークを意識したりするなど部下の行動は大きく変わります。
上司と部下の関係はドライになりがちです。例えば、朝の挨拶を例に挙げると、一言声をかけるだけで終わってしまうことも珍しくありません。しかし、トヨタの上司は部下に体を向けて顔色や体調を気にするなど、部下に関心を持つ姿勢を大切にしています。
挨拶だけではなく、普段の会話や相談でも自分に関心がないと感じられてしまうと部下の悩みの種となり、モチベーションを下げる可能性があります。部下の個人的な悩みが業務効率の悪化につながり、怪我や不良を招いてしまうこともあるため注意が必要です。
部下が「自分のことを気にしてくれている」と感じてこそ、「上司に相談してみよう」という気持ちになります。結果的に不良やトラブルを防止し、生産性の向上につながるでしょう。
直属の部下だけではなく周りにもアンテナを張り、体調面など聞きづらいことは同僚を通して情報収集するのも有効です。
何か問題が起こって部下から相談を受けたとき、よくある上司は1から10まで答えを教えてしまうことがあります。もちろん、部下が求めている回答ではあるものの、このような対応をしてしまうと部下の成長を妨げてしまいます。
答えのすべてを教えるのではなく、ヒントや部下が持っていない視点を会話に織り込むと、新たな見方で物事を解決しようとします。まずは「気付き」を与えて、できるところまで挑戦させることが大切です。
また、管理監督者にも新人とベテランがいて、同じ課題を与えても新人には難しく感じられます。その際には上司としてアドバイスをするべきですが、アドバイスの際は自分なりの考えを持っておくとよいでしょう。
トラブルの対応などで部下からの報告を聞く際に、「報告だけを聞いて終わり」にしてしまっている上司は少なくありません。これでは本当に問題が解決できたかを確認できないばかりか、新たな問題の早期発見も不可能です。
トヨタの上司は報告に対してさらに質問を重ねたり不明点がある場合には自分も現地に出向いて実際に目で確認したりします。現地や現物に答えが隠れていることも多く、トラブルの防止にとどまらず企業の成長のきっかけになるかもしれません。
また、トラブルを報告する部下の心理として、自分のミスを隠したいと考えていることが多いです。上司は、物理的な原因の追究だけではなくどうして言いづらいのかまで確認するべきです。
以下の記事ではトヨタで大切にされる「現地・現物」の概念を詳しく解説しています。現地・現物を重視する習慣の重要性やオフィスワークへの落とし込み方もまとめているので、ぜひご覧ください。
「現地・現物」で議論するとは?現地・現物の重要性やオフィスワークへの落とし込み例も紹介
よくある上司は、部下が成果を出したり目標を達成したりした場合、結果だけを評価してしまいがちです。もちろん具体的な数字や成績を出すことは素晴らしく、結果を評価されてうれしいと感じる部下もいます。
しかし、トヨタの上司は結果だけでなくプロセスも重視しています。
例えば、キズの低減に取り組んでいた管理監督者は、結果こそ出なかったものの人の習熟度や訓練の進捗、作業のばらつきなど独自の視点でキズの原因を分析し、積極的に改善に取り組んでいました。「視点は間違っていない」と伝え、継続してテーマに取り組むよう伝えたところ最終的には目標の達成ができました。
このように、結果だけでなくプロセスも評価することは部下のモチベーションを維持し、最終的によりよい結果につながる場合もあります。
トヨタの上司には「めんどう見」の考え方が受け継がれています。トヨタの「めんどう見」は辞書に載っている「面倒見」とは少し意味合いが異なります。以下の記事では柔軟なコミュニケーションを可能にし、部下のモチベーションや技術を高める「めんどう見」を解説しているので、ぜひご覧ください。
トヨタのめんどう見とは?めんどう見の例や導入するメリットも解説
トヨタの上司とよくある上司の間には以下4つのような違いが存在します。
従業員ひとりひとりが仕事に対して意欲的になることで、利益の創造につながります。部下との接し方や教育の方法にお悩みの方は、ぜひトヨタの上司の考え方を取り入れてみてください。
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