監修者
安田 幸治
OJTソリューションズで、 お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車にて42年間の現場経験、管理職の経験を経てOJTソリューションズに入社しました。モットーは「仲間に感謝」。時に愛犬に癒されながら、日々お客様の現場で感謝・改善・努力の毎日を過ごしています。
オフィスワークで、残業が絶えなかったり、生産性が低かったりするような職場は、「ムダ」が多いのかもしれません。トヨタでは、ムダを「付加価値を生まない諸要素」と定義し、なくすよう日々改善に努めています。オフィスワークの改善においてもムダ取りは有効です。しかし、特にオフィスワークでは定常でない業務が多く、ムダが見えずらい環境になっている職場も多いでしょう。
本記事では、こうしたオフィスワークのムダを「視える化」するコツを解説します。
まずは現在おこなっている仕事を下記の3つに分類してみましょう。
主作業とは、その部署・役職がやらなくてはならない仕事のことです。例えば、商品企画部の場合、企画書をつくることがまさに主作業になります。
続いて、付随作業とは、主作業をおこなうために付随的に発生する仕事のことです。例えば、先ほどの商品企画部の場合では、企画書をつくるためにおこなう情報収集や、集めた資料をわかりやすいように保管しておくことなどが付随作業にあたります。
最後にムダとは、やらなくてよいこと、つまり何の付加価値も生まない仕事のことです。例えば、内容に誤りがあって何度もプリントしてしまう、確認のために上司を探し回る、企画書を提出したのに上司の机の上に何日も放置されている、といったことです。
このように分類することで、付随作業やムダに費やす時間の多さを改めて実感できるでしょう。付随作業を効率化し、ムダを排除すれば主作業にかける時間が増え、品質の向上につながります。
ゴミ箱は職場のムダを見つけるヒントになります。製造現場では、破棄された不良品の状態や量でその工程がどのような問題を抱えているかわかることもあります。
オフィスの場合、例えば、シュレッダーから排出されるゴミの量をムダな作業の指標としてとらえることができます。不要なプリントを減らせれば、用紙代の削減という原価低減のメリットもありますが、シュレッダーにかけるムダ時間を削減できます。
シュレッダーのゴミに社内会議の資料が多いのであれば、会議の改善にもつながります。会議資料を、参加人数が不明で多めに印刷していたり、普段から多めに印刷していたりすることはないでしょうか。印刷や廃棄のムダな作業時間がそこで発生しています。
トヨタには、改善すべきムダを見つけることを目的に、現場の1カ所に立ち続けて全体を観察する「定点観測」という手法があります。工場全体を見渡せる場所で止まって観察しているからこそ、「あそこは人の動きが悪い」「あの人は動き回っているが、肝心な作業はしていない」などの問題が見えてきます。
オフィスワークでも同様のことができます。定点観測していると、「あの人は何度もプリンターとの間を行き来している」など、必要性が疑わしい動きがきっと見えてくるはずです。
このような定点観測で明らかになる動きのムダは、病院などの動線設計が重要な現場ではより改善効果が顕著に現れるでしょう。また、定点観測をするには、ビデオなどで録画を撮っておくことも効果的です。
「ムダ」な作業はなくすことがゴールですが、「付随作業」はゼロにしてすむものではなく、効率化が重要となります。そのためには動作を細かく分け、一つひとつの工程にかかった時間を計測する「標準作業組合せ票」が役に立ちます。
標準作業組合せ票は、仕事が完成するまでにどのような工程があり、それぞれどれくらいの時間がかかっているのか、階段状に記録するものです。
この手法を実践した、ある販売店の事例を紹介します。その販売店では、「接客時間を増やし、お客様の心をつかむこと」を活動テーマとし、まずは付随作業にかかっている時間を調べるため、販売員全員が1日の行動を分刻みで記録しました。中でも問題となっているのが「注文商品の発送手配」であることが分かり、その作業を標準作業組み合わせ票を使って細かい工程に分けて計測しました。
ある工程で一番早く理想的なやり方をしている販売員がいれば、その手順を標準化し、全員が同じようにできるよう習得していった結果、活動前は71分だった接客時間を、約5倍の356分まで増やすことに成功しました。
このように作業を数値化することは、メンバーに現状を客観的に把握してもらうと同時に、フラットな視点で改善を進めやすくします。
オフィスワークでのムダを視える化するコツを解説しました。
まずは、現状の仕事を主作業、付随作業、ムダの3つに分類することから始めてみましょう。また、ゴミ箱を点検したり定点観測で分析すると職場内にどのようなムダがあるかを見つけるヒントになります。
また効率化のポイントは、作業の実態を数値で示すことです。1日の行動や仕事を細かく計測して整理することで、問題となっている作業を発見できます。発見したら、どうすれば効率化できるかを考え、実行していきます。
職場の当たり前になっていると、そこに潜むムダに気づくことができず、職場の改善が進みません。本記事でお伝えした内容を参考に、まずはムダを「視える化」することを意識してください。
RELATION
PAGE
TOP