トヨタには仕事上で問題が発生しないようあらゆるルール、「標準」が定められています。しかし、細かくルールを定めても守られなければ意味がなく、再度同じ問題が起こる可能性があります。そのため、トヨタではルールを風化させないように実行させるしくみと習慣が存在します。

ルールの風化を防止するためには、日常点検と定期点検の2つが重要です。直接作業をする人が毎日する日常点検と管理監督者が決まったスパンでする定期点検により、常に標準が守られているかを確認できます。本記事ではルールを実行させるしくみと習慣をはじめ、凡事徹底の重要性も解説します。同じようなミスが頻発している状況の方は、ぜひご覧ください。

ルールは「風化防止」で成否が分かれる

職場で起きる問題は、過去にも発生した問題であることが大半です。トヨタでは、問題が発生したら改善をして同じ問題が起こらないように対策しますが、それでも再発してしまうことはあります。これらの原因を探ると、多くは「標準が守られていなかった」ということに行きつきます。

つまり、ルールは決めるだけでは意味がなく、決めたルールが守られるように風化を防止することが重要です。トヨタの現場で実施される例としては、日常点検と定期点検の2本柱を徹底して行う風化防止活動があります。日常点検は直接作業をする人が毎日行い、定期点検は管理監督者が週に1度などの頻度で点検フォローシートなどを使って現場をチェックします。

こうしたルールの定着には、作業者の意識だけでなく、管理監督者のフォローがとても重要です。

凡事徹底は上司しだい

標準などのしくみはつくるのがゴールではなく、つくったあとが本当のゴールだと考えられています。トヨタでは、当たり前のことを徹底してやり続けることで誰にもできないレベルを目指すこと、つまり凡事徹底を非常に大切にしています。そのために、上司は高い意識を持つことが求められます。

この凡事徹底をやりきると、たとえば5Sのルールが徹底されて敷地内にまったくゴミが落ちていないなど、今まで見えなかったような景色が見えるようになります。ある現場で小さなナットが落ちていたことに従業員が気づき、敷地内すべてのけん引台車を点検したところ、タイヤのナットが外れた台車があることに気が付いた事例もあります。

そのまま放置していれば大きな事故につながった可能性もあります。これは普段から５Sが徹底して行われている現場ならではのエピソードと言えるでしょう。一見、何でもないように思える事でも徹底的に向き合うことで、小さな気づきから問題の早期発見や未然防止につなげることができます。

片付けをしないと40時間のムダが生まれる

凡事徹底の具体例として「5S」が挙げられます。5Sとは整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字をとったもので、仕事をするにあたって意識すべき重要な項目です。5Sを徹底すればムダが浮き彫りになり、何をどのように改善すればよいのかが明確にわかります。

例えば、デスクの上が書類で山積みになっていた場合、毎回必要書類を探すのに10分かければ1年間で40時間のロスが生まれます。まずは不要なものを捨てて、必要なものをすぐに取り出せるように、決められた場所に置く「整理・整頓」を徹底すべきです。5Sは一見シンプルなルールですが、徹底するだけで生産性向上に大きく寄与します。

まとめ

職場で問題が起こらないよう、あらゆるルールを定めている企業は多いはずです。しかし、トヨタではルールを定めるのがゴールではなく、真のゴールはつくったあとだと考えています。日常点検と定期点検を徹底することで決めたルールを実行させるしくみは、トヨタならではの活動です。

職場のルールは決めるだけで満足せずに、一度決めたらやりきる姿勢や習慣を大切にしてこそ、初めて成果を得られるはずです。放置されている守れないルールやしくみがないか、一度考えてみてください。