ひとつひとつの段取りがスムーズに進んでこそ、思うような成果が得られます。しかし、トラブルや問題が起こると、どれだけ綿密に計画を立てていてもスケジュール通りに物事が進まなくなるため、注意が必要です。

トヨタでは、仕事の段取りを阻害するトラブルや問題を防ぐために、２つのレベルで対策を行っています。同じ問題が二度と起きないようにする「再発防止」と、類似する問題を発生させない「未然防止」です。本記事ではトラブルや問題を防ぐ考え方や具体的な方法をご紹介します。トラブルが多く起こったり同じような問題に悩まされたりしている場合はぜひご覧ください。

同じ問題が二度と起きないようにする「再発防止」

トラブルや問題の発生を防止することは、仕事を段取り良く進めるためとても大切なことです。

トラブルや問題を防ぐための1つ目の施策が、「再発防止」です。再発防止とはその名のとおり、同じ問題が二度と起こらないように対策をすることを指します。根本的な原因を取り除くことが目標で、トヨタでは「真因（真の原因）」を突き止めるところから始めます。問題を発生させる真の要因を突き止めず、小手先だけの対策をしても根本解決にはなりません。

トヨタでは、問題が発生すると「それは真因か」という言葉が飛び交います。例えば、ボルトの締め忘れによるミスが発生した場合に、「作業員の確認不足なので厳重注意する」という人の原因のみに対処することはありません。その作業員がうっかりしていたらまた同じミスが起こるからです。「ボルトを締めないと次の工程に進めないようにする」などのしくみを改善することで、真因を取り除く対策ができます。

類似の問題を発生させない「未然防止」

再発防止ができたら、その対策を「未然防止」につなげることも重要です。未然防止とは、将来のリスクを想定して類似の問題を防ぐことです。トヨタには仕事をスムーズに進めるためのしくみが多くありますが、そのなかに「横展」いわゆる横展開というものが存在します。これはあるラインや工場で成功した対策を他の類似するラインや工場に共有、展開するしくみです。未然防止とは横展をすることでもあります。

例えば、ボルトの締め忘れの問題を解決するために、締まっていない製品は次の工程に流れないしくみを作った場合、その現場だけで成功例を留めておくのはもったいないです。他の現場でも同じしくみを導入し、さらには部品のつけ忘れや検査のし忘れなど、類似の問題が起こるのを未然に防止します。

「再発防止」と「未然防止」で組織は強くなる

再発防止と未然防止、どちらもトラブルや問題が起こらないようにするために必要不可欠です。これらの施策は生産現場だけではなくオフィスワークにも応用できます。まずは再発防止から、それができたら未然防止へとステップを踏めば、計画通りに仕事を進められるはずです。

また、再発防止と未然防止が成功したら、どちらも1回限りで留めておくのではなく、どんどん他のメンバーや別の部署、現場へと広めるべきです。せっかく成功した事例だからこそ知ってもらったりマネしてもらったりすることで、トラブルや問題が起こるのを事前に防げる可能性が高いです。再発防止と横展による未然防止を習慣的に続けていけば、組織力は大幅に上がっていきます。その結果、すべての段取りがスムーズに進むようになり、生産性の向上が期待できます。

まとめ

トラブルや問題が起こらないようにするためには、大きく分けて2つの方法があります。同じ問題が二度と起きないようにする「再発防止」と、同じような問題を発生させない「未然防止」は、どちらもスムーズな仕事のために欠かせません。また、トヨタ式の横展で未然防止を行えば、組織力のアップにもつながります。トラブルや問題との向き合い方にお悩みの方は、ぜひこの2つの方法を取り入れてみてください。