方針や計画が組織の隅々まで伝わってなければ、目標達成に向けた段取りはうまくいきません。どのような会社にも今後の経営方針や経営計画などがありますが、多くの職場では単なるスローガンで終わってしまっている現状があります。具体性のないスローガンは「現場としてやるべきこと」につながらず、計画を実行に移せずに終わってしまうことも少なくありません。

計画を確実に実行に移すには、方針を明確にすることが必要不可欠です。トヨタの管理職は、会社の方針を自部署のやるべきことに置き換えて具体的な方針を立てます。その多くが数字で具体的にあらわされており、メンバーひとりひとりに、方針実現のために何をすればよいかを考えさせるようにしています。

本記事では、方針を具体的に示すべき理由をはじめ、計画を実行に移すためのポイントも解説します。段取りよく方針実現のためのコツを知りたい方は、ぜひご覧ください。

方針がスローガンで終わっていないか

どのような会社にも、経営方針や経営計画などが定められています。しかし、多くの職場では、「顧客満足の徹底」や「業界ナンバーワンを目指す」といったスローガンで終わっている現状があります。経営層は方針を示したつもりでいるでしょうが、このような大まかな方針では組織の隅々にまで十分に伝わっていないことがほとんどです。その結果、何も実行に移されないままということも少なくないでしょう。

計画を確実に実行に移すには、方針を明確にすることが必要不可欠です。経営層からトップダウンで方針が下りてきても、具体性をともなっていなければ、部下は何をしてよいかわからなくなってしまいます。立派な方針でも、現場の第一線の組織にまで自分事として伝わっていなければ意味がありません。

自分で考えることで組織力は高まる

トヨタでは、会社としての方針が打ち出されたら、その方針を受けて部として遂行する方針を作成し、部の方針を受けて課として遂行する方針を作成します。そして、具体的な方針に応じて係長以下のすべてのメンバーが改善テーマを打ち出し、その達成に向けて動きます。つまり、すべての個別の改善テーマが達成できると、会社全体の方針の目標が達成できるしくみになっています。

ここで大切なのは、トヨタの管理職が上から下りてきた方針を自分の部署がやるべきことに置き換えて、具体的な方針を立てる作業です。例えば、「生産性を20％向上させる」や「リードタイムを50％に半減させる」など、数字を用いて具体的に示せば、メンバー全員が方針実現のために何をすべきかを考えられます。

トヨタの方針管理は、組織のトップから現場まで一貫性があること、トップダウンとボトムアップが融合していることに大きな特徴がありますが、これらを計画立案・実行するうえではメンバーの考える力が必要になります。こうした社員それぞれに考えさせる風土があるかどうかで組織力は変わるといってもよいでしょう。

段取り力の大前提は、先を見通した計画立案・実行で、トヨタでは方針を具体的に示すだけではなく、メンバー全員に知恵を絞らせることから始めています。

組織が一体となって実行するのが日本企業の強み

密なコミュニケーションによって会社方針を組織の隅々にまで丁寧に伝えていくやり方は、スピード感に欠けると感じる人もいるかもしれません。たしかに、「日本の組織は決断が遅い」と揶揄されることもありますが、いったん決断したことについては、組織が一体となって確実かつスピーディーに実行できる点が圧倒的な強みになります。

欧米の企業は逆で、トップの決断は早い一方で方針が組織に浸透するまでに時間がかかり、現場の足並みがそろわないことも多々あります。日本企業の確実かつスピーディーな実行の背景にあるのは、密なコミュニケーションや根回しです。決断の早さ・遅さには一長一短がありますが、組織が一体となり方針に向かってスピーディーに実行できる点は、トヨタをはじめ日本企業の強さだと誇るべきところです。

まとめ

すばらしい方針が立てられても、単なるスローガンで終わったり組織の隅々まで「やるべきこと」として伝わっていなければ意味がありません。計画を確実に実行に移すためには、数字で表すなどして方針を具体的に示すことが大切です。また、会社全体の方針を自分たちの部署に落とし込み、メンバーひとりひとりに「方針達成のために何をすべきか」を考えさせるようにしてください。

方針の共有や落とし込みがうまく機能すれば、強い会社に成長できるはずです。会社の方針がうまく実行できていないと感じている方は、ぜひ今回紹介した方針管理を参考にしてください。