人を育てることは難しく、部下に自分と同じような働きをしてもらうためにはさまざまな努力が必要です。トヨタではリーダーの立場にある人に対して、自分の分身をつくるよう指導されており、自分の分身が何人できたかもリーダーの能力として評価されます。

分身をつくることで人を育てる風土が継承されるため、仕事の成果だけではなく優秀な人材を育てられてこそ真のリーダーとして認められます。

本記事ではトヨタが大切にしているリーダーとしてのあり方や部下の育て方を解説します。リーダーとしての心構えや何をもって評価されるのかにも触れるので、ぜひご覧ください。

「人を育てる文化」を継承する

人材育成には唯一の正解がなく、決まった｢作業｣を習得することと比較すると非常に難しく複雑です。リーダーや管理監督者の立場にある方にとっては悩ましい問題と感じられるのではないでしょうか。

トヨタでは他の企業と同様に仕事の成果も求められる一方で、自分の「分身」を何人育てられたかも評価のものさしになります。自分と同じように業務をスムーズに遂行できる人材が生まれれば、上司がその組織から去っても職場が円滑にまわります。

また、「分身」に対して人を育てる文化が受け継がれていくため、自分が去ったあとにも優秀な人材が誕生するしくみができあがります。自分の分身がさらに分身をつくり…という人を育てるいい文化が継承されていきます。

結果として組織が停滞せず常にレベルアップしていく環境がつくられ、業績向上にもつながります。

日々の数字を追いかけることは経営において非常に重要です。しかし限られた自発的な優秀な人材だけが数字を作っている場合、離脱のリスクがとても大きくなります。組織が常に成長し続けるためには、人を育てる文化を継承していく必要があります。

真のリーダーは部下を伸ばす人

トヨタでは「優秀な人材」を育てる人が評価されます。トヨタの元社長である豊田英二が残した有名な言葉のひとつに「人間がモノをつくるのだから、人をつくらねば仕事もはじまらない」というものがあります。まさに人によって現場力や生産性が左右されることを表す言葉です。

トヨタが考える真のリーダーは、自分で考えて答えを出したり成果をあげたりする人ではなく、「部下を伸ばす能力を持っている人」です。

例えば、部下を伸ばせるリーダーは、問題が起こったときに答えを教えるのではなく、自分で答えを見つけるよう促します。具体的には、拡大質問と肯定質問を使い分け、「どうしたらうまくできると思う？」と相手から答えを引き出すようなかかわり方をします。そこで相手から出てきた言葉や、相手の経験を加味して適切に提案や助言をします。

こんなかかわり方ができるようになると、自分で答えを見つけたときの達成感の連続により、部下が仕事に意欲的になり、自らどんどん成長していきます。

部下を認めて仕事への意欲や「成長したい」と思う気持ちを引き出すのが、真のリーダーのあるべき姿であり、そんなリーダーのもとではきっと「分身」がしっかりと育っていくのではないでしょうか。

まとめ

トヨタではリーダーに対して、数字や成果を出すことだけが評価のものさしではないと考えています。自分の分身を何人つくれたか、部下の能力を伸ばして優秀な人材を育てられたかが評価のポイントです。

また、自分の分身をつくれば、自分が組織から去っても人を育てる文化が継承されていきます。

人を育てる立場にある方のなかには、部下への接し方や育て方に悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。ぜひトヨタのリーダーのあり方を意識して、部下のやる気や能力を引き出せるよう心がけてみてください。