監修者
山本 昭則
OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポートするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車のプレスにて39年の現場経験を経て、OJTソリューションズに入社しました。改善活動には時に大変な場面もあります。それを乗り越える笑顔、会話を特に大事にしています。休日は趣味の山小屋づくりで精神統一をし、日々の仕事の英気を養っています。
「職場方針」をきちんと定めておけば、目標が明確になるとともに、課題が可視化されるため、効率よくゴールを目指せます。多くの企業においても職場の目標を定めて目指すべきゴールを明確化していると思いますが、トヨタの職場方針のつくり方にはある特徴があります。
トヨタで職場方針をつくる際は、上位方針をもとにしてブレークダウンするのが基本ですが、このときにただ上から降りてきた方針を職場方針に落とし込むわけではありません。上位方針が示す課題と、現場が抱えている問題を結びつけて、職場方針をつくっています。本記事では、上位方針をもとにした職場方針のつくり方をはじめ、目標設定のコツをご紹介します。職場方針のつくり方にお悩みの方はぜひご覧ください。
現場力を高めて目標となる成果を上げるためには職場方針の設定が欠かせません。トヨタでは職場方針をつくる際には、上位方針と現場、両方を深く理解して目標を設定するのが大切だと考えています。職場方針をつくる際には、基本的に上位方針をもとにして職場方針にブレークダウンしますが、上位方針が示す課題と、現場が抱えている問題をリンクさせて適切な目標設定をおこなうのが重要です。
職場方針をつくる際には、まず現場のあるべき姿と現状のギャップを比較し、課題を導き出します。課題を導き出す際には、以下の5つの要件を考慮してください。
上の3つは企業ビジョンから降ろされてくるものに対して、下の2つは現場で見出されるものですが、トヨタでは取り組む課題が散在しないよう、両者を結びつけて方針管理をしています。
トヨタでは、現場のマネジメントツールとして日常管理板を活用しています。日常管理板は、経営者が目指しているものと現場が取り組んでいることを連携できる魅力がありますが、方針立案が楽にできるのも強みのひとつです。あるべき姿と現状のギャップに着目するのが重要だと先述しましたが、現場での気付きがあった際に「気付いたことメモ」として日常管理板に貼り付けさせれば、方針立案が楽にできるようになります。
また、日常管理板に貼り付けられた現場の生の声を職場方針として設定すれば、現場全体の達成意欲向上も期待できます。自分たちが発した意見が取り入れられれば、「もっと頑張ろう」とやる気がアップするうえ、それぞれのメンバーが職場方針を深く理解することにもつながるはずです。職場方針の理解が深まれば、現場をさらによくするための施策を考える動きが出てきて、結果的に高い現場力を手に入れられます。
トヨタの日常管理とは、会社方針や目標達成のために、従業員全員がベクトルを合わせて一人ひとりの役割を実行するためのしくみです。以下の記事では日常管理を詳しく解説しています。日常管理板の書き方もまとめているので、ぜひご覧ください。
トヨタの日常管理とは?進め方や日常管理板を使う3つのメリットも紹介
職場方針を定める際は現場で起こっている問題に着目する必要がありますが、まずは現場やすべてのメンバーに職場方針への理解を深めさせたり改善すべき点を積極的に探して多く挙げさせることが大切です。トヨタでは、現場での困りごとを2つに分けて現場の意欲向上を図っています。大きな問題は職場方針に織り込んで対策を実施し、小さなものは自ら改善し創意工夫として会社へ提案させて評価を受けられるようにします。
トヨタの「創意くふう」とは、いわゆるメンバーによる改善提案制度です。日常業務のなかで気付いたことや改善した方がよいことをA4サイズの用紙1枚にまとめて上司に提出すると毎月工場単位で優秀な提案が選ばれ、最終的には賞金も獲得できるしくみです。
また、創意くふう制度には誰でも参加しやすい「3行提案制度」と呼ばれる3行程度でまとめる改善提案制度も存在します。このように、トヨタでは多くの改善提案が出るように問題発見の意欲を高めるしくみが多く存在します。
職場方針や具体的な目標が決まったら、成果が達成できているかどうかを判断するための評価基準である「管理指標」を設定します。また、管理指標に到達するためには、どのように問題を解決していくか、具体的な実行計画を立てる必要があります。その際においては、以下の5点を明確にすることが重要です。
これは方針から実行計画にいたるまですべてのプロセスにおいて重要で、これらをしっかりと定めておけば一人ひとりがやるべきことが明確になり、大きな成果につながります。管理者には職場方針に基づいた現場の日常管理を徹底するとともに、メンバー全員を統率する力が求められます。
高い成果を上げ、現場で起こっている問題を解決するためには職場方針が欠かせません。トヨタでは、上位が示す課題と現場が抱えている問題を結び付けて自職場の方針を設定しています。そのために、方針と現場の両方を深く理解することが必要になります。職場方針をつくる際には、まずはあるべき姿と現状のギャップをあぶりだすところから始めてみてください。
また、職場方針に現場の意見を取り込むことでメンバーの目標達成に対する意欲も高まります。日常管理板は方針立案のヒントになるでしょう。職場方針がなかなか定まらなかったり現場力が乏しかったりすると感じている方は、ぜひトヨタ式の職場方針のつくり方を実践してみてください。
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