監修者
安田 幸治
OJTソリューションズで、 お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車にて42年間の現場経験、管理職の経験を経てOJTソリューションズに入社しました。モットーは「仲間に感謝」。時に愛犬に癒されながら、日々お客様の現場で感謝・改善・努力の毎日を過ごしています。
管理監督者やリーダーがチームや現場を統率して高い現場力を手に入れるためには、メンバーとのコミュニケーションが必要不可欠です。個性や価値観、経歴が異なるメンバーでも適切なコミュニケーションを取れば、「意見を聞いてくれる」と感じて次第に心を開くようになります。
トヨタではチーム内でのコミュニケーションを重視しており、コミュニケーションを活性化させるために日々6つの技法を使うことを推奨しています。どれも単純に感じられるかもしれませんが、振り返ってみると実際にはできていないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、トヨタがおこなっている6つのコミュニケーション技法の概要やコミュニケーションを活性化させるテクニックを解説します。メンバーとのコミュニケーションを見直すきっかけになると思いますので、ぜひご覧ください。
仕事の滞りなく高い成果を出すためには、チーム内の全員が同じ方向を向いて自発的に仕事に取り組む必要があります。そのためにはメンバーとのコミュニケーションが必要不可欠です。メンバーとの日々のコミュニケーションを振り返ってみると、案外できていないと感じられることもあるかもしれません。
トヨタでは、管理監督者が適切にメンバーを指導し、自発的な行動を促すために、以下6つのコミュニケーション技法を用いることを推奨しています。メンバーが多様化する中、チーム内のコミュニケーションはこれまで以上に重視されています。
メンバー一人ひとりの価値観の違いを理解し関心を持って関われば、メンバーの自発的な行動を促せます。なお、今回紹介する技法は1つだけではなく複数のものを並行して使うのがポイントで、まずはそれぞれの基本的なテクニックをリーダー自身が身につけるべきです。
承認は、メンバーが持つ多様な価値観を認めることやメンバーの存在自体を認めて受け入れることです。人は誰でも自分を価値ある存在だと他人に認めてほしいという「承認欲求」を持っています。仮に自分の発言が受け入れられないもしくは否定されると傷つき、心を閉ざしてしまうかもしれません。
トヨタではメンバーがミッションを達成したときには、「よくやった」と心からほめて承認するのが基本です。ほめて承認すれば「もっと認めてもらいたい」とモチベーションが高まり、メンバーの自発的な行動につながります。
仕事の成果をアピールするのが得意な人や苦手な人がいますが、目立たない成果に対しても常に目を向けて、声かけをするのが大切です。日常的に「がんばっているな」と声をかければ、気にかけてくれていると感じて、メンバー全員のやる気がアップするはずです。
傾聴は、メンバーの話をきちんと聞くことです。メンバーと仕事の会話をすれば、リーダーの立場上、アドバイスとして自分の意見を言いたくなるかもしれません。しかし、そこは一度我慢してまずはメンバーの話にしっかりと耳を傾けるべきです。
よくあるリーダーの例として、メンバーの話を最後まで聞くどころか、いつの間にか自分の話に切り替える行動が挙げられます。また、別の作業をしながらいい加減に相槌だけ打つのも典型的なパターンです。このような行動は先述した承認につながらず、メンバーの不満を生みます。承認と傾聴はメンバーへの関心という点で大きな関係があるのです。
たとえその場で答えが出なくてもきちんと話を聞くようにしてください。傾聴してもらうだけでメンバーの気持ちは整理され、自分で解決のヒントをつかめるかもしれません。
共感は、メンバーと同じ気持ちになろうとしたりメンバーの立場で考えたりすることです。相手と同じ感情や思考になって同調し合えば、お互いに対する信頼を深められます。そのための第一歩は、相手の問題を理解することです。多様な価値観を承認し、傾聴することで相手が何に悩んでいるのかを把握します。
「諦めが肝心」や「時間が解決する」は、共感しているように見えて自分の価値観の押しつけにすぎません。誰でも日々生きているといろいろな事象が起こりますが、まずはメンバーの話を傾聴して問題を整理し、安心して仕事に取り組める方法を一緒に考えるべきです。職場の環境改善や勤務シフトの調整など、メンバーが抱えている問題に寄り添うのが大切です。
合わせるは、繰り返し・要約・促しの3つの技法を組み合わせたテクニックです。リーダーがメンバーに対して、言い回しや動作で「自分は味方である」「自分は君の仲間である」とそれとなく伝えながら接近します。多くのメンバーはリーダーに話をする際、立場の違いから警戒心を持ち、防衛本能を働かせることが多いですが、まずはその壁を取り払うことが重要です。
そのためには、メンバーを名前で呼ぶことや正対して話を聞くこと、言葉をシンクロさせるといったことが有効です。そのうえで、メンバーの話の一部をくり返したり話や悩みに対して問題点を提示したり、言葉や身振りで話の展開を誘導したりすればメンバーは立場の違いを超えて話しやすくなります。
質問は、メンバーへの問いかけで問題の明確化や別の視点の気付き、行動の変容を積極的にリードすることです。「合わせる」は、メンバーの心中を話しやすくさせるための補助的なテクニックですが、質問は積極的な働きかけです。質問の方法には「限定質問」と「拡大質問」の2種類があり、問題や相手の置かれている状況や段階に応じて使い分けます。
まず限定質問は、客観的に見て答えがひとつしかなく、誰もが即答できる質問を指し、まだお互いをよく知らないメンバーに使われます。会話がテンポよく進むため話しやすいリーダーと認識してもらえるうえ、問題発生時の情報収集にも役立ちます。
一方拡大質問は答えがひとつとは限らない質問で、メンバーに問題の真因と対応策を見つけられるよう促すための質問です。さらに、問題を掘り下げるために「肯定質問」と「否定質問」があり、リーダーは質問の種類や順序を臨機応変に変える必要があります。
指示は、メンバーに何をすべきか提示し確実な遂行を求めることで、提案は主に中堅のメンバーを対象に、悩んでいるメンバーに案を示して考えさせることです。助言は、熟練のメンバーに対して自発的に活動できるよう、助言する程度に関わって、のびのびと仕事ができるようにサポートすることです。メンバーの個性や経験、スキルに応じた関わり方をすれば、人材育成はもちろん一人ひとりが持つ多様性を尊重した職場づくりができます。
人材育成に欠かせない方法として、小さな課題で成功体験を積ませて自信と経験が身についたところで、大きな課題に挑戦させる「2段階依頼法」があります。大切なのは指示・提案・助言の使い分けで、誤って使ってしまうとメンバーの負担が大きくなり、現場の生産性の低下にもつながります。多様性に富んだメンバーがいきいきと仕事をするためには、一人ひとりに合わせた接し方をすることが大切です。
さまざまな個性や価値観、経歴を持ち合わせたメンバーをひとつにまとめて、前向きに仕事をさせるのがリーダーの役割です。トヨタでは誰もが働きやすい職場をつくるために大切なのはコミュニケーションだと考え、以下の6つの技法を使ってコミュニケーションを活性化することを推奨しています。
それぞれの技法はひとつだけではなく並行して使うことが重要です。6つの技法の概要と基本的なテクニックを身につけて、メンバーとのゆるぎない信頼関係を築いていくことがリーダーには求められます。メンバーとどのようにしてコミュニケーションを取ればよいかお悩みの方は、ぜひ今回紹介した6つの技法を試してみてください。
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