監修者
三尾 恭生
OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車にて42年の現場経験、管理職の経験を経てOJTソリューションズに入社しました。座右の銘は「不易流行」。変える勇気と変えない勇気を持つことが大事だと信じ、現地現物でお客様と伴走しています。
今の職場では、机の上にうず高く積まれたやりかけの仕事、机の下に放り込まれた書類の数々、オフィスの隅に重ねられたダンボール、退職して空いた机の上に置かれている誰のものかわからない荷物などはないでしょうか。
例えば、積み重ねたファイルの中から今使う書類を取り出したりサインするためのペンを探すなど、モノを探す作業を1日あたり2分×10回やっていたとします。これを1か月に換算すると20分×20稼働日=400分、さらに1年では400分×12か月=4800分(80時間)になります。つまり、1日8時間勤務であれば10日間、何も生み出さない作業に時間を費やしていることになるのです。
製造現場ではよく知られる5Sですが、オフィスではあまり取り組まれていないのが現状です。だからこそ、少しでも5Sを実践するだけで仕事がやりやすくなり、目に見える効果を得られるでしょう。本記事では、オフィスの中で5Sをどう実践するかについて具体的に解説します。
5Sとは、職場環境の改善・維持を求めるスローガンで、次の5つの頭文字を取ったものです。
5Sは、単に掃除をしてモノを片付ける美化運動ではありません。「7つのムダ」など、職場環境や工程間に隠れている問題を視える化し、生産性があがるモノの配置を目指すこととされています。
参考記事:7つのムダとは?トヨタ生産方式の考え方や改善の具体例も解説
それでは、5つのSをそれぞれ解説します。
一つ目の「整理」は、いるものといらないものを分け、いらないものは処分することです。
いらないものは保管スペースを浪費するうえ、もしデスクの脇などに置かれれば、オフィスで働く人々の動線を阻害します。つまずいたり、積み重ねていたものが崩れたりしてケガをするもとになるかもしれません。
また、原材料や備品が整理できていないと、不要なものの陰になって必要なものの在庫を正しく把握できず、過剰発注や欠品など、7つのムダのうちの「在庫のムダ」を引き起こす原因にもなります。
二つ目の「整頓」は、必要なときに誰でもすぐに取り出せるように、置くもの・場所・量を決めて明示することです。
ただ備品を引き出しの中にきれいに並べただけでは、5Sが意味する「整頓」ではありません。例えば、毎日何度も使うものは、引き出しの手前のほうに置いて使いやすく置いておくことまで実施するのが「整頓」です。
キャビネットなどに共有の備品を保管するのであれば、ルールを設けて誰にでもわかりやすい形で保管されている必要があります。備品を使用する際に探すことがないように、わかりやすく保管しましょう。
また、5Sのなかでも特に改善効果が高く、はじめに力を入れて進めるべきなのが、これまで説明した「整理」、「整頓」の2Sです。
オフィスで2Sを実践すれば、書棚を一つ減らせるかもしれません。もし、その空いたスペースに安価なプリンターを部署専用に購入して設置できれば、しばしば混雑して待たされるフロア全体のプリンターを使わなくてもよくなります。つまり、2Sを進めると、「在庫のムダ」や「動作のムダ」だけでなく、「運搬のムダ」、「手待ちのムダ」をなくすことにも広げていくことができます。
三つ目の「清掃」は、汚れを落とし、隠れた不良や事故の原因を見えやすくすることです。
いつも油がたれている箇所があるとしたら、すでに設備の故障が静かに始まっている、またはその予兆であることが推測でき、大きな問題を未然に防ぐことができます。
また、その油によって、製造品が汚れて不良になってしまうことがあるかもしれません。そして、その油に気付かず人が通れば、すべってケガをすることにもつながります。
「清掃」を徹底することは、生産性だけでなく、品質や安全を守ることでもあります。
四つ目の「清潔」は、整理、整頓、清掃が行き届いた状態を常に維持することです。
一度整えた環境も、仕事をしているうちにもとに戻ってしまうことがあります。職場環境だけでなく、例えばパソコンのデスクトップに並んでいるファイルなども同様です。
整理、整頓、清掃が行き届いた状態をキープすることが大切です。
五つ目の「躾」は、5S以外の分野でも、現場の皆が決められたルールを守ることです。
始業前に点検をおこなったり作業手順を守るなど、職場で決められた基本ルールを徹底することで、組織の力をはぐくみます。また、そのルールが決められた背景や理由を理解させることも有効でしょう。
職場環境の改善のためには、5Sは重要な視点です。
5Sは製造現場だけでなく、オフィスの改善でも効果を生みます。ぜひ実践し、職場の全員が気持ちよく、生産性高く働ける環境を整えましょう。
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