監修者
見城 吉昭
OJTソリューションズで、お客様の改善活動と人材育成をサポ―トするエグゼクティブトレーナーをしています。トヨタ自動車の機械加工にて39年の現場経験を積み、OJTソリューションズに入社しました。趣味の読書や旅行で自分の世界を広げながら、現場で働く人の声を大事に「働く人の心のための改善」に日々取り組んでいます。
企業が決めたビジョンを実現するためには高い成果を上げる必要がありますが、成果の達成には職場方針や目標設定が必要不可欠です。トヨタでは職場方針や目標を見つける際に「5大管理」を用いており、安全・品質・生産・原価・人材育成の5つの視点に着目しています。
これらはそれぞれ独立しているように見えて、実はすべてつながっているため、1つ解決するとその他にもよい影響を及ぼす可能性があります。
そのため、最初から5つの項目すべてに取り組むのではなく、1、2個からスタートしても問題ありません。本記事では、職場方針や目標を見つける際の5大管理の概要をはじめ、具体的な目標設定の例も解説します。どのようにして職場方針や目標を見つけるべきかお悩みの方はぜひご覧ください。
トヨタでは職場方針や目標を見つける際に「5大管理」を用いています。5大管理とは現場を統率する管理者が徹底すべき以下の5つのミッションです。
5大管理のなかでできていないものや不十分なものに対して改善策を考え、職場方針や目標に落とし込みます。これら5つの要素はすべてよい現場をつくるために重要で、トヨタで活用されている日常管理板をつくる際にもこの5つの観点を柱として定めています。また、昨今では上記の5つに加え、「環境」も併せて重要な要素として取り組んでいます。
5大管理はもともと生産現場を想定してつくられていますが、オフィスにも応用できます。例えば、経理部門の場合、以下のような目標設定ができます。
生産現場とはまったく異なる目標ですが、すべて業務効率や業績向上をうながす目標です。ただし、最初からミッションすべての設定・取り組みをする必要はなく、特に優先度や困り度合いが高いものから取り組んで問題ありません。実際、1、2個からスタートする事例も多く存在します。
1、2個のミッションのみ設定・取り組みをおこなってもよい理由は、それぞれのミッションは独立しているように見えて実は1つにつながっているからです。そのため、1つ解決すると、他のミッションにもよい影響を及ぼし、結果的に多方面的によい現場に成長する可能性があります。
ある菓子メーカーではメインの焼き菓子を対象に、「最高品質の追究」を方針・目標にしました。品質を高めると合格品の範囲が狭くなるため生産性の低下が危惧されましたが、実際に出た結果は想定とは真逆でした。常に合格基準内に収まるものづくりが徹底されることで不良品が減り、つくり直しや追加生産の機会が一気に減少したのです。
最終的にこの菓子メーカーでは15%近い生産性の向上に成功し、5大管理の連動性、この場合は「品質」と「生産」の連動をうまく活用できたよい事例となりました。
5大管理を設定する際には、まずは5大管理におけるどの項目が一番問題になっているか考え、職場方針・目標や改善テーマを決めてみてください。
品質と生産のつながりを証明できる事例をご紹介します。例えば、人手不足の中膨大な仕事量をこなさなければならない状況のオフィスがあったとします。そのなかで他のメンバーが作成した資料に不備があった場合(品質に問題があった場合)、「仕方ない」で済ませてしまう人も多いかもしれません。
しかし、結果的につくり直しを命じられればその分時間がかかり、時間あたりの生産性は低下します。また、顧客や取引先からの信用を失ったりする可能性もあり、その場合は顧客対応で時間をとられ、生産性が大きく下がってしまうでしょう。つまり、必要な品質をその都度ひとつひとつの仕事で達成することと生産性の向上は深い関係です。
トヨタではそれぞれの工程で品質を完璧につくり込む「自工程完結」の考え方を大切にしており、常に「自分たちの次の工程はお客様」と考えて業務をおこなっています。この考え方で仕事をすると、「自工程で不良をつくらない」、「不良を次の工程に渡さない」の2点が徹底でき、結果的に高い品質を保持し、生産性も向上します。
職場方針や目標を見つける際、トヨタでは5大管理を用いて、安全・品質・生産・原価・人材育成の5つの視点から職場方針や目標を見つけています。それぞれのミッションでできていないものを方針や目標として定めれば、業績の向上やいい職場づくりに結びつくはずです。
5大管理はすべてつながっていて、1つが解決できれば他のミッションにもよい影響を及ぼす可能性があります。最初は1、2個から設定・取り組みをおこなっても問題ありません。
安全から人材育成まで、5つの項目は達成の優先度順に並んでいますが、まずはどの項目が一番問題になっているかを考えたうえで、方針・目標を決定してみてください。
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